• 012.天駆ける馬に乗り慢心した男

012.天駆ける馬に乗り慢心した男


天馬ペガサスとべレロフォン

ペガサスは翼を持った天馬で、ベルセウスがメドゥーサを退治した際、首の切り口から滴った血より生まれた。風よりも速く空を駆けるこの馬を捕らえることは、人間の手ではむずかしかった。
当時、コリントスの街に、王の血を引くとも海神ポセイドンの恵子ともいわれる、ベレロフォンという青年がいた。
何とかしてペガサスを手に入れたいと熱望した彼は、予二二口者の指示に従い、女神アテナの神殿でひと晩を過ごす。すると夢にアテナが現れ、彼に黄金の事楓を手渡してこう告げたのだ。
「ペイレネの泉にいるペガサスを、これで捕らえるがよい」
ベレロブォンは跳ね起きた。見ると女神の姿こそなかったが、手には手綱が握られている。
「ありがたい、私には神のこ加護があるのだ」
ペイレネの泉とは、ペガサスがそのひずめのひと蹴りで湧き出させたという美しい泉である。
ベレロブォンは勇躍して泉に向かった。すると泉で水を飲んでいたペガサスは、あたかも彼を待ち受けていたかのように、おとなしく黄金の手綱を取りつけさせたのである。こうして天馬は彼のものになった。今や彼は、天をも自在に駆けることができるのだ。
あるとき、リユキア国を訪ねたべレロブォンはイオパテス王に民を苦しめるキメイラ退治を頼まれる。キメイラは獅子の頭に山羊の胴、蛇の尾を持ち、ロから火を吐く怪物だった。これまでこの怪物を相手にして、生きて帰った者はいなかっただが、そんなキメイラも、ペガサスに乗るベレロブォンにとっては物の数ではない。見事退治して、彼は人々の喝宋を浴びた。その強さに驚いた王は自分の娘と結婚させ、彼に王位を譲る。
だが、数々の武勲を立て名声が高まるにつれ、ベレロブォンの心にうぬぼれや慢心が生じてきた。
(私はこの世に並ぶ者なき英雄で、神にも愛されている。ペガサスに乗って天に昇れば、神々の仲間入りができるのではないか?)
彼はペガサスに飛び乗ると、オリンボスを目指した。しかし、そんな不敬をゼウスが許すはずがない。大神は天に向かい空を駆けていたペガサスの鼻先に、1匹の虻を放った。虻に刺されて驚いた天馬は暴れ、ベレロブォンを振り落としてしまう。そして自分だけ天に昇ったペガサスは、ゼウスの軍馬となり、やがて星座となるのである。
一方、地上に落下したべレロブォンは足を折り、神々にも憎まれる身となり、各地を排個した。そして最後は、哀れにものたれ死にしたという。


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