002.それはカオスから始まった

神々の誕生

かつて天地の前にはカオス(混沌)のみが存在した。カオスはまず大地の女神ガイアを生み、次に夜の女神ニュクス、闇の神工レポス、愛の神エロス、葉の地底タルタロスを生んだ。ニュクスと工レポスは夫婦となり、澄んだ大気の神アイテルと昼の女神へ己が生まれた。
ちなみに、エロスは実の女神アフロディ房子という説もある。また、タルタロスは冥府の奥底よりさらに深いところに存在するという。
さて、これらの原初神のうち、ガイアは男神の助けを借りず、単独で天空の神ウ一フノスを生んだ。
ヘシオドスによると、「ガイアはウラノスを自分と同じほどに巨大なものとして生んだので、ウラノスは彼女を覆いつくした」 という。こうしてウラノスは、神々の王として君臨することとなった。世界が始まったのだ。
このウラノスとガイアの交わりからは、さまざまなものが生まれた。まずはティタン神族。大洋の神オケアノス、コイオス、クレイオス、光の神
ヒユ〇オン、イアベトス、農耕の神クロノス、女神ティア、大地の女神レア、法と掟の女神テミス、記憶の女神ムネシュモネ、女神ポイペ、泉や湧き水の女神テテユスの12神だ。
続いて、キュクロブス族とへ力トンケイル族が、それぞれ3人ずつ生まれた。キュクロブスはひとつ目の巨人であり、ヘ力トンケイルは100本の腕に50個の頭を持つ怪物であった。
ところが、ウラノスはこれらの神々に自らの地位を奪われるのを恐れ、またキュクロブスやヘ力トンケイルの醜さをいとわしく思い、生まれるそばから彼らをタルタロスに閉じ込めてしまった。
夫のあまりに非情な仕打ちに腹を立てたガイアは、自らの胸から金剛の鎌を取りだして、恵子クロノスに与え、夫への復讐を命じる。
あるとき、ウラノスはガイアとともに一夜を過ごすため、彼女のもとにやってきた。その場で待ちぶせていたクロノスは、隙を見て、母からもらった鎌で父親の男根を切断し、彼を神々の王の座から追放したのである。
このときウラノスが流した血がガイアにしたたり落ちて、復讐の神エリニュスや巨人ギガスが生まれる。クロノスはさらに、ウラノスから切断し
た男根を海に投げ込んだが、そのときに生じた泡から誕生したのが、実の女神アフロディテなのである。
ウラノスを追放したクロノスは、この後、父に代わって神々の上に君臨することになったのだ。