014.オイディプス、父殺しの悲劇

実現したアポロンの神託

「おまえの命は恵子によって奪われるだろう」
テーパイ王ライオスは神託を受け驚愕した。怯えた王は、生まれたばかりの息子を山に捨てた。
羊飼いに拾われた赤子は、コリントスの宮殿に連れていかれ、ポリユボス王に引きとられる。そしてオイディプスと名づけられ、王の息子として育てられた。成人したオイディプスは、自分の生い立ちに疑念を持ちはじめた。そこでデルフォイに赴き、アポロンの神託を受けた。だがそれは、「おまえは父を殺し、母を妻にする運命にある」
というおぞましいものだったのである。ポリユボス王と王妃を実の父母と思っていたオイディプスは、二度と故郷に帰らぬ決心をする。
旅の途中、山中の狭い道で従者を連れた男と道を譲る譲らないで争いとなったあげく、オイディプスはふたりを殺してしまう。実はこの男こそ、彼の父ライオスであった。
神託が半ば実現したのも知らず、オイディプスは旅を続け、やがてテーパイ近くに達した。そこには顔と胸が女で体が獅子の怪物スフィンクスがいて、旅人に謎をかけていた。謎が解けない旅人は食われてしまうのだ。怪物は彼にも謎を課した。
「朝は4本足、昼は2本足、夕方になると3本足になる生き物は何か?」
オイディプスは、たやすく謎を解いた。「答えは人間だ。人は赤ん坊のときは両手両足の4本を使って這い、成人すると2本足で歩き、老人になると杖を使って3本足で歩くからだ」

謎を解かれたスフィンクスは、恥じて崖から身
を投げて死んだ。
テーパイに入ったオイディプスは大歓迎を
受けた。というのも、ライオス王亡きあと、
次のような布告がされていたからだ。
「スフィンクスを退治した者には、王位と
先王の妻イオカステを与える」
オイディプスはイオカステを妻とし、王
位に着く。こうしてデルフォイの神託は完
全に実現した。
ふたりの仲はむつまじく、2男2女をもうけ
るが、彼が王になって以来、不作と疫病が続いた。
神託を伺うと、ライオス王を殺害した者を追放
せよと告げられる。そこでオイディプスは熱心に
殺害者を捜すが、調べれば調べるほど、それは自
分以外ありえないことを知った。しかも、彼が実
の母と結婚したことも判明したのである。
近親相姦の罪におののいた王妃は首を吊って自
殺し、オイディプスは自ら目玉をえぐり出した。
そして、大罪を犯したオイディプスはテーパイ
を追放され、娘に手を引かれあちこちさまようが、
コロノスという村で姿を消したという。