003.2代続いた親子の確執

ティタン神族とオリンポス神族の争い

天空の神であったウラノスを追放して主神となったクロノスは、まずタルタロスに幽閉されていた兄弟たち、すなわちティタンを解放した。

だがこのとき、同様に閉じ込められていたキュクロプスとヘカトンケイルは放置された。実はこのことが、オリンポス神族との争いの際に禍根を残すことになるのだ。

次に彼は、ウラノスが完成しきれなかった世界創造の事業を引きついだ。こうして彼のもとで、河川や運命、死、闘争、悲しみ、幸運、そして太陽や月が生まれた。世界は徐々に今日、われわれが見るようなものに近づいていったのである。しかし、やがて彼は自らが追放した父と同じような道をたどることになる。

あるとき、母親である大地の女神ガイアは、クロノスに向かい次のように予言した。

「おまえはいずれ自分の子どもに王位を奪われるでしょう」

ガイアはティタンと同様、自分の子どもであるキュクロプスやヘカトンケイルを、快く思っていなかったのだ。

クロノスはこの予言を信じた。そして、妻レアとの間に生まれた子どもを、次々と飲み込んでしまったのである。

この暴挙にレアは耐えきれず、最後の子どもとなるゼウスをクレタ島で生んだ。そして、クロノスには岩を産着でくるんだものを子どもと偽って渡し、飲み込ませたのだ。クレタ島で成長したゼウスは、後にクロノスを騙して薬を飲ませ、兄や姉たちを吐き出させた。ちなみにこのとき吐き出されたのは、ポセイドン、ハデス、デメテル、後に妻となるヘラ、ヘスティアといった神々である。さらに彼は、タルタロスからキュクロプスやヘカトンケイルを助け出した。そして、これらの怪物とゼウスたちは団結して、クロノスらと戦うことになった。このときキュクロプスは、ゼウスに雷と稲妻を与えたという。

ティタンたちと、オリンポス山を拠点としたゼウスらの闘いは10年も続いた。だが、この戦いの決着は、ゼウスに恩義を感じるヘカトンケイル族の活躍で終結した。ひとりが100本の腕を持つ3人のヘカトンケイルは、合わせて300本の腕でティタンたちに大きな岩を投げつけた。ゼウスに雷を投げつけられて目が見えなくなっていた彼らには、この岩攻撃は防ぎようがなかったのだ。

こうして制圧されたティタンたちは、タルタロスに閉じ込められ、ゼウスを頂点とするオリンポスの神々の時代が始まるのである。

なお、この戦いに功のあったヘカトンケイルはタルタロスの番人となり、ティタンたちの見張りにつくことになったという。