011.見る者を石にしてしまう怪物

ベルセウスのメドゥーサ退治

「なんと、わしは孫に殺されるというのか!」
神託を受けたアルゴス王アクリシオスは怯え、孫ができる可能性を排除するため、娘ダナ工を青銅の塔に幽閉した。だが、かねてから美しいダナ工を狙っていたゼウスは、黄金の雨に姿を変えて塔に忍び込み、思いをとげる。こうして生まれた男児がベルセウスである。
恐怖にとらわれた王は、母子を船に乗せて海に流した。船はセリボス島に漂着し、ベルセウスはこの島で優れた青年に成長する。
島の王はタナ工に懸想し、邪魔なべルセウスを亡き者にしようと謀る。そして、貧しいベルセウスを祝宴に招き、祝いの品がないのを人々とともに嘲笑したのだ。
ベルセウスは宣言した。
「メドゥーサの首を取り、それを王に贈ろう!」
これこそ王の思うつぼだった。メドゥーサは、ゴルゴン3姉妹のひとりで蛇の髪を持ち、見る者を石にする力を持つ恐ろしい怪物。並の人間ではたちうちできない。しかし、ゼウスの子であるベルセウスは、神の祝福を受けていた。旅立つ彼にヘルメスは剣、アテナは青銅の楯と助言を贈った(ベルセウスはまず、ゴルゴンたちの妹にあたるクライアイ姉妹の家に向かった。そして、3人で目と歯をひとつずつしか持たないこの姉妹から、それらを盗んだのである。
「目と歯を返してほしければ、コルコンたちのすみかを教えろ」

3姉妹は脅迫に屈し、彼はコルコン3姉妹のすみかと、怪物退治のための必需品を持つニンフの居場所を知った。そしてニンフの協力で、空飛ぶ靴と姿の見えなくなるハデスの兜を手に入れる。
ベルセウスは空を飛び、怪物のすみかに到着した。彼はハデスの兜をかぶると、眠っているメドゥーサに近づき、剣を抜いた。そして、「メドゥーサの姿を楯に映し、それを見ながら討ちなさい」
というアテナの助言に従い、石になることもなく、彼女の首を切り落としたのである。物音に気づいたゴルゴン姉妹が目を覚ましたが、ベルセウスの要は見えない。彼は無事にその場を脱出した。
故郷に帰還したべルセウスは、自分を嘲笑した王とその取り巻きにメドゥーサの首を見せた。そのとたん、彼らは石と化し、ベルセウスはセリボスの英雄となったのだ。
後日、彼は生まれ故郷のアルゴスに向かい、その途中でたまたま行われていた競技会に出場した。
ところが、ベルセウスが投げた円盤は偶然、観客の老人に当たり、老人は死んでしまう。
実はこの老人こそアクリシオスであり、まさに神託どおりの結末となったのであった。