002.北欧神話の中核をなすモチーフ

世界樹ユグドラシルと且属麻原

北欧神話の世界には、宇宙の中心にあってこの世界を支えている巨大な樹木という壮大なモチーフが登場する。
それが「ユクドラシル」だ。
ユクドラシルは、オーディンら3人の神によって殺害された原初の巨人ユミルの体から生えだした巨木である。
この木はトネリコとされており、ユクドラシルとは「オーディンの神の馬」という意味だという。なお『古エッタ』によれば、ユクドラシルの広く張り出した3本の根が伸びた先には、以下のような9つの世界がある。
①アスガルド/アース神族の神々が住む領域。オーディンの居住するウルハラ宮殿などがある。
②ヴアナヘイム/アース神族と敵対し、後に和解したヴアン神族の神々が住む領域。
③アルフヘイム/天空近くにあり、光のエルフたちが住む領域。
④スヴアルトアルフヘイム/地下にあり、闇のエルフたちが住む領域。
⑤ミッドガルド/人間が住む領域。北欧諸国の王たちが統治している。
⑥ヨツンヘイム/霜の巨人たちと丘の巨人たちが住む領域。
⑦ムスペルヘイム/南方の炎の領域。炎の巨人たちが住む。
⑧ヘルヘイム/死者たちの領域。冥府の女王ヘルが君臨する。地獄=ヘルの語源でもある。
⑨ニブルヘイム/北方の氷の領域。ユクドラシルの根をかじる二ドペグと呼ばれる蛇が棲息。
この他、ユグドラシルには3つの魔法の泉がある。ヨツンヘイムに向かう根にあるミーミルの泉、アスガルドに向かう根にあるウルズの泉、二ブルヘイムに存在し、二ドペグと呼ばれる蛇が棲息するフヴ工ルゲルミルがそれである。
なお、この巨木にはさまざまな生き物が寄生している。ウルズの泉には2羽の白鳥がいるし、梢には巨大な鷲がいて、その羽ばたきで世界に鳳を送り込んでいる。この鷲はフヴ工ルゲルミルに寄生する蛇と敵対しているとされる。というのも、両者の問を行き来して、互いの悪口を吹聴しているリスがいるからである。
さらに、枝と枝の間では常に4頭の鹿が走りまわり、その葉を食い荒らしている。梢の頂に棲息する雄鶏はその場き声で神々の眠りを覚まし、悪霊を追い払う。ちなみにこの雄鶏は光り輝いており、その光で世界を照らしているのだ。
一方、ユクドープシルに支えられた世界の周辺には大洋が広がっている。そして、その大海には、自らの尾をくわえ込んで世界をぐるりと取り囲む、大蛇ヨルムンガンドが棲息しているといわれる。