008.スサノオ尊の女婿となって……

オオクニヌシ神の国造り

前項でヤガミヒメに振られた八十神は、憎さのあまりオオクニヌシ神の殺害を企んだ。その結果、兄神たちのために2回にわたって命を落としたオオクニヌシだったが、母神とカミムスビ神らの尽力で生還した。そして、紀伊の神の
「スサノオ尊のおられる根堅す洲国に行けば、いいようにとりはからってもらえるだろう」
という助言に従い、根堅洲国に下った。
この国は、黄泉比良坂という入り口こそ同じだが、黄泉国とはまた異なる死後の世界である。地上に降りたスサノオは、この根堅洲国の王となっていたのだ。
さて、根堅洲国に着いたオオクニヌシは、そこでスサノオの娘スセリヒメ(須勢理毘売)に出会い、恋に落ちた。だが、スサノオは彼に蛇の洞窟で寝るなど、多くの試練を与えた。オオクニヌシはスセリヒメの助けで、これらの難題をすべて遂行したのである。
その後、彼はスサノオの太刀と弓を盗み、スセリヒメとともに逃げ出した。後を追ってきたスサノオは、黄泉比良坂で彼に呼びかけた。
「その太刀と弓でハ十神を追放せよ。そして私の娘を正妻とし、出雲に高天原に届くほどの宮殿を建てよ」
オオクニヌシはスサノオのいうとおりに兄神たちを追放し、出雲に宮殿を建てて国造りを始めた。
この宮殿こそ出雲大社である。
なお『古事記』には、オオクニヌシの国造りを手助けしたある神の話が載っている。カミムスビ神の子であるスクナビコナ神(少名毘古那神) である(『日本書紀』 ではタカミムスビ神の子)。その名は体の小ささに由来している。
この神がオオクニヌシの前に姿を現したときのようすは、次のように伝わる。
- オオクニヌシが出雲の美保岬にいたとき、海の彼方から小さな舟に乗って近づいてくる、体長10センチほどの小さな神があった。
オオクニヌシはこの神に名前を聞いたが、答えない。お供の神々に尋ねたところ、カミムスビ神の子でスクナビコナ神だという。そこで彼がカミムスビに真偽を尋ねたところ、確かにわが子だという。カミムスビはわが子に命じた。
「おまえはこれよりはオオクニヌシと兄弟となって国造りに励めよ」
国造りにおけるスクナビコナはきわめて優秀で、穀物の神という属性を持つほか、符睨や医療、薬事の道にも通じていた。
だが、彼は出雲国の完成を見ないうちに姿を消した。スクナビコナは本来、海の彼方にあるとされていた永遠の国、常世国に住む神だった。