002.インド神話の最高神

破壊と再生の神シヴァ

ヒマラヤの聖地力イラース山頂で苦行をしているのが、三神一体のひとりで破壊と再生の最高神シヴァだ。
このときのシヴァは、裸体に虎の皮を腰にまとい、首に蛇を巻きつけ、伸ばした髪を頭上に結い上げた苦行者の姿で描かれる。醸には3本の横線が引かれ、手には三叉の武器リシュールを持っている。
シヴァとは「吉祥」という意味だが、彼はまた、ヒンドゥーの神々の中でも最も多い別名を持つ。とくに有名なものに、バイラヴァ(恐怖の殺識者)、マハーデーヴァ(偉大なる神)、パシュパティ (家畜の王)、シャンカラ(恩恵を与える者)などがあるが、このシャンカラの名が生産や生殖を司る神とされたので、リンガ (男根) への崇拝が生まれたのである。ナタラージャ (踊りの王)などの名もあり、広い神格を与えられているのも特徴だ。
以下は、シヴァにまつわるいくつかの神話だ。
- 世界周期の終わりに際し、ブラフマーとヴィシュヌが、ともに自らを「世界の創造主」と名のって争っていたとき、巨大な火炎を放ったリンガが襲来した。ふたりがその偉大さを認めて賛歌を唱えると、リンガの中から3つの目、千手と千足をもつシヴァが出現した。
- ある偉大な王が、6万人の先祖の王子を供養するために苦行をした。それを知ったブラフマーは、聖なる天の川ガンジスを地上に流す許可を与えた。だが地上に直接流すと、人間たちに多くの被害を与える。そこでシヴァに祈ると、彼はその豊かな髪で川の流れを受けとめることを約束した。こうしてガンジスの奔流はシヴァの髪で弱められ、7つの支流となって大陸を流れた。これに
よって人間たちや生き物たちが潤い、樹木や葦原までもが恩恵を受けた。
- 巨人魔族の3人の魔王が、三界を征服してそれぞれ都を建造し、圧政を敷いた。神々は魔王たちに勝てるのはシヴァのみなので、彼に3人の退治を頼んだ。シヴァは答えた。
「私の力だけでは無理だ。すべての神々の力を半分貸してほしい」 神々はこれを承諾し、戦いが始まった。そしてブラフマーは戦車の御者に、ヴイシュヌは矢に変身した。魔王は3つの都を合体させて城砦としたが、満身の力を込めたシヴァの矢は、これを一撃のもとに貫いてしまったのである。
最初が天地創造に関する偉大さ、次が恩恵の多さ、最後が強さを示し、いずれもシヴァの偉大さを強調するものだ。
なお、シヴァは仏教にも取り入れられ、「大自在天」などの名が与えられている。