014.最大スケールの戦争叙事詩

『マハーバーラタ』の世界

昔、インドにクル族という一族がおり、ある代 になってドリターフーシュトラとパーンドゥという 兄弟が生まれた。兄は盲目のため、弟のパーンドゥが王位を継ぐ。だが、パーンドゥが早くに亡く なってしまったので、盲目のドリタラーシュトラが王位を譲り受けた。
王には、長男ドゥルヨーダナ以下、100王子と呼ばれる100人の子どもがいた。そして、死んだ弟にはユディシュテイラら5王子がいた。
100王子と5王子は一緒に育てられたが、5王子のほうが何かにつけて優れていたので、100王子は彼らを妬みはじめた。そして、ドゥルヨーダナは策略をめぐらして、5王子を都から追放したのである。

放浪中の5王子はある日、パンチャーラ国で王女ドラウバディーの婿選びの弓大会があることを知った。その大会で王子のひとりアルジュナが優勝したため、ドラウバディーは5王子共通の妻となった。
5王子が生きていることを知ったドゥリヨータナは、計略を用いて5王子を殺そうとしたが。失敗。逆に彼らを帰国させて王国の半分を与えることにした。ユデイシュテイラは王となり、国を繁栄させた。ところが、ユデイシュティラが賭博好きなのを知ったドゥリヨーダナは、それを利用して5王子からすべての土地や財産を、奮ってしまった。そして、こう告げたのだ。
「おまえたちは12年の問、森の中でさまよい、人に知られず暮らせ」 5人の子どもとドラウバディーは、命令どおりほ年間を森の中で隠者として暮らした。
だが13年目に、5王子軍はついに100王子軍
との戦いを決意した。こうして、同族がふたつの陣営に分かれて、凄惨な戦いを展開することになったのだ。この大戦争の結果、100王子軍は全滅、5王子軍も多くの戦死者を出した。
老いたドリタラーシュトラ王は戦死者の多さに世をはかなみ、隠退生活に入った後に死んだ。
戦いを終えた5王子も、すでにこの世に未練はなかった。そこでユデイシュティラは、王位をアルジュナの恵子に譲り、兄弟たちやドラウバディー、そして1匹の犬とともに、神々の住むヒマラヤに登ろうとした。
しかし道は遠く険しく、一族は次々に倒れ、ただひとりユディシュティラのみが、最終の地にたどり着くことができた。そして、4人の兄弟や妻が待っている天国へと昇っていった。
そこにはすでに100王子も住んでおり、クルー族はその後、天国であらゆる怨恨を忘れて、幸せに暮らしたのだった。